労基署に行く Part4

この後、会社の重役(兼工場長)から個別に呼び出しを受けました。工場長は、このような不正が長期間に渡って行われていることを知らなかったそうで、労基署に行く前に、社内の誰かに話をして欲しかった。という旨のコメントをされました。なお、工場長は、分厚いクリアファイルを手にしていました。労基署から、この件に関しての資料提出を求められていたと思われます。

その後、工場長から再度の呼び出しがあり、(このときは所属上長も同席)、不払い分の残業代が決まったので伝達するとのことでした。各月ごとの残業時間についての報告と、残業代が次の給料日に合算で振り込まれるとのことでした。

事実、給与の振込日に、労基署の担当者の方から電話がありました。電話の内容は、不払い分の残業手当が振り込まれているか、とのことでした。
その日は、ATMに行けなかったので、後日、確認をするという返事をし、後日、銀行で記帳したら、通帳には不払い分の残業手当込みの数字が記載されていました。電話で、その旨を労基署の担当者の方に伝えると、この確認事項をもって、この案件は全て終了となるということでした。

後に、無償での深夜残業を命じた所属上長は、労基署に今回の件でのレポートを提出することになり、そのレポートは、私の職場にも手渡されました。

また、この後、3ヶ月後に、私の時間外労働は復活しました。人手不足の職場ですから、そうなるだろうとは思っていました。ただし、残業手当は正当に支払われています。

私と同様のケースで労基署に届け出る場合、以下の点を押さえるべきだと思います。

〈届け出の際に必要な資料〉
・時間外労働分不払いの期間の給与明細(コピー可)
・時間外労働不払い分の期間の残業日時及び総残業時間の記録(明細)(届出者が作成)
・「会社公認」の勤務記録(通常は会社側のみにある)

ここに記すまでもありませんが、上記3点のうち、労働者側が提出する上の2点は必須でしょう。会社が労働をさせたとされる「公式」の記録がないと、労基署は対応できないはずです。私の勤務先のタイムカードは電子式ですが、印字または手書きのタイムカードであれば、タイムカードのコピーも提出すべきでしょう。

Part2で触れるべきでしたが、労基署に届けた際に、会社側に勤務記録が存在するかどうかを聞かれました。その時に、コピー用紙を手渡され、手書きで作業日報(勤務記録)の様式をスケッチしました。この作業日報のスケッチが決め手となったとみていいでしょう。

私の勤める会社では、作業日報を、当日の作業終了後に会社に提出することになっています。この日報が会社に残っていたので、会社は不正を承認(発見)した訳です。

その日報の内容ですが、作業日、使用マシン、記載者名(作業日報に記入する場合は、必ず記入する)、作業順序、製品受注番号、準備開始、作業開始、作業終了、まとめ終了の各時間、仕上げた製品の内容(実際の数量、予備数、見本数、製品の寸法など)、作業内容、作業人数の記入欄があります。この内、作業終了、まとめ終了の時間が定時以降になっており、記載者名に私の名前があったため、私が時間外労働を行っていた証拠となったと考えられます。

なお、同僚は私の他2人ですが、うち、1人は記載者名に名前を記入しない日があったため、その分の時間外労働は認められず「泣き寝入り」になりました。

繰り返しになりますが、「会社公認」の勤務記録がないと、届け出をしても労基署は対処できないと見ていいでしょう。この点は必ず抑えておくべきでしょう。

新聞などで、残業代未払いに関する報道を時折見かけますが、そうした記事を読んでみると、その背景には様々な理由があって残業代未払いという結果を生むようです。
残業代は、詫び代の意味を含んだ手当でもありますので、当然、労働者は残業代を請求できる権利があります。ただ、私の場合は、労基署に行く前に、会社のトップ若しくは重役に打ち明けてからでも良かったかな、と思いました。仮に、それでもらちが明かない場合は、然るべき所に訴えるべきだと思いますが…

なお、この記事は、執筆時点で届け出から1年以上経過しています。また、労基署に同様のケースで届け出た場合、この記載の通りに解決するとは限りませんので、あくまで体験談として参考にしていただきたく存じます。